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観察会資料(講義・現地説明)+滝おやじによる補足

この資料は、「観察会」に参加しなかった人が、観察会では、“何処で”“何を見た”かを分かるようにと作りました。
もとにしたのは、10/21の準備講義・実習編の資料と、10/28の現地観察解説の配布資料です。
それに、現地で説明した観察地点の見どころや露頭図解などに、下見の時の画像や、石井氏の撮影された画像を追加し、
行かなかった方にも、追体験していただけるようにしました。
平成19年度地学野外観察会

房総の地形を訪ねる

房総半島南端の地形 1-洲崎半島-


平成19年10月21日(日)10:00~16:00(講義編)
    10月28日(日) 8:00~18:30(現地編)

講師:八木令子(地学研究科)・吉村光敏(外来研究員)

千葉県立中央博物館・友の会共催

館山市伊戸の大正ベンチ(手前)と現成ベンチ(海側)
 もくじ
 <現地編> が、観察ポイント。 地図は、国土地理院2.5万地形図「館山」に加筆。アルバムでルートを石井氏が入れてくれたので、それを借用。
No. 地名 観察内容 W.C.
千葉~館山・・館山道 車窓の景色見どころ。
1 JR館山駅のデッキ 元禄汀線
2 館山市藤原 平砂浦海岸平野遠望
元禄砂丘の広がり体感
3 平砂浦サンドスキー場跡(砂山) 丘陵にのりあげた砂丘地形

砂丘の衰弱
4 弁天島 元禄地震で隆起した島
5 平砂浦海岸 防砂林、大正期以降の砂丘
6 御岳不動滝 旧海食崖と海食崖型の滝
7 館山市伊戸 昼食、
地震による隆起でできた4段の岩石海岸段丘面
人工による岩石段丘の平坦化
侵食入江の隆起でできた海岸段丘地形
8 館山市見物 関東大地震で隆起した波食棚(大正ベンチ)
9 館山市浜田鉈切洞穴、海南鉈切神社 沼Ⅰ面の隆起海食洞穴と当時の離れ島 
10 沖ノ島 陸けい砂州
古海面高度を示す縄文早期遺跡
は、行かなかった観察地点です。 地点と見どころは、以下の通り。
  館山城:館山平野の段丘面の展望、城下の仏下台の下が元禄汀線。
  ●
柏崎:絵図と元禄汀線が対応できる。
  香谷:沼サンゴ層の露頭。化石採集や露頭を壊さないように・・・下流の耕作者が怒っています。
  沼:沼サンゴ層の文化財指定地・・・地図に未記入。というのは露頭でなく、行くとがっかりするので。
  洲崎灯台:天気がよいと房総三浦半島がよく見える。灯台の立っている丘は、昔の離れ島が隆起したもの。
  布良:隆起海食洞。海食洞の壁に鍾乳石が析出したものですが、荒廃しています。背後は見事な向斜軸。布良~相浜漁港付近は、元禄汀線。
  白浜の屏風岩:直立した向斜軸の地層が海食されている。それより、ここから野島崎に掛けて、元禄汀線が明瞭に見られる。
  小塚:小塚大師近くの巴川河岸。完新世の津波堆積物の露頭・・・・面白い露頭です。

 <講義編>
2-1.観察会の開催要綱
2-2.房総半島南端の地形地質概観
2-3.地質図
2-4.房総南端は第一級の隆起地域
2-5 海岸地形にもいろいろある(場所による違い)

 地学野外観察会「房総の地形をたずねる」は、房総各地のかわった知られざる地形の紹介を通して、地形の見方・調べ方を学び、地形の理解を深めることを目的としています。
 今回は、房総半島南部の館山半島を訪ね、地震性の地殻変動によってできた海岸段丘や段丘上の微地形、旧海食崖とそれに懸かる滝、強い西風によって丘陵にのり上げた砂丘砂など、海岸のいろいろな地形を観察します。

<観察会の全体の狙い>
・・・・・こう見るともっと面白という手前味噌
 地学野外観察会「房総の地形をたずねる」は、房総各地のかわった知られざる地形の紹介を通して、地形の見方・調べ方を学び、地形の理解を深めることを目的としています。
 今回は、房総半島南部の館山半島を訪ね、地震性の地殻変動によってできた海岸段丘や段丘上の微地形、旧海食崖とそれに懸かる滝、強い西風によって丘陵にのり上げた砂丘砂など、隆起海岸のいろいろな地形を観察します。
・・・・という風に計画書にも書いてあります。

 観察会って、どうしても色々こんなことが、あれもこれもの、色々出てくる幕の内弁当風、になってしまいがちです。個々の観察は、面白いけれど、観察地点間の関係はないのが、普通かもしれませんけど、今回の観察会では、回る地域に共通性があります。
 それは、元禄地震(1703年)と大正地震(1923年)で隆起した、もっというと、沼Ⅰ面(約6000年前)を作った大地震以来、地震により隆起し続けてきた地域の海岸の地形を見て回るということです。
 そんなの簡単、「4段の海岸段丘ができただけでしょ、簡単な地形だよ」という方が大部分だと思いますが、それで終わるなら隆起の模式地になっている千倉海岸にだけ行けばいいわけで、別のところをわざわざ見に行くまでもありません。・・・それは、日本全体を鳥瞰して見る人の視点。地史的な視点でもあるかな。

 それはそれで面白いのですが、私たちは、千葉県人なので、地面を這い回って、別の視点で、見てみたいと思います。「強い龍も地元の蛇には勝てぬ」、いわゆる地域ネタというやつです。

 実は、簡単そうに見える隆起海岸平野の地形というのも、なかなか奥が深い。今回特にご紹介したい地域ネタ、あるいは、地形学的な知見は次の2つです。
 1.この地域は、同じように地震によって隆起した海岸という共通の条件なのですが、波あたり・風当たりの強い外洋と波あたり・風当たりの弱い内湾、砂浜海岸と磯浜海岸といった、場所場所の条件が違っています。その結果、同じ磯浜海岸でも、砂浜海岸でもそれぞれ違った地形ができています。
今回は特に磯浜海岸の隆起型に注目して見ました。
2.「大地震の結果、凄い砂丘ができた」という、平砂浦の砂丘については、その後、砂防開拓工事で砂を取ってしまって、我が物顔に動き回っていた砂丘群を機械力で一掃してしまったので、千葉県人にすらすっかり忘れられているようです。
 もしかしたら、「大地震の結果、凄い砂丘ができた」ということは、日本でこれだけかもしれない、すばらしい現象ですので、ご紹介したいと思います。
 <現地編 観察スポット個々の見どころ紹介>
 以下 

 
1-0  千葉~館山の館山道  車窓の景色見どころ





 
1-1  JR館山駅のデッキ  元禄汀線を見る

どこで、何をみるか

こう見えます 






 1-2  館山市藤原  平砂浦海岸平野遠望、元禄砂丘の広がり体感
 

、書きます。 
 1-3  平砂浦サンドスキー場跡(砂山)  丘陵にのりあげた砂丘地形、砂丘の衰弱

 駐車場から
 1-4  弁天島 ━元禄地震前は島(岩礁)だった━

 
1-5  平砂浦海岸 ━海岸の砂防━

 
 1-6 御嶽不動滝 隆起海食崖にかかる懸谷の滝
 



 安房の海岸の通例で、地震で隆起した6000年以来の海岸段丘面と、その背後の隆起海食崖が続きます。そこに小さな川が流れてきます。・・・懸谷を作っていますね。
 隣接して、伊戸の滝と御嶽神社の不動滝があります。
 ここの二つの滝は、流域水源は大山193.6m
 流域面積は、0.17平方キロと、0.20平方キロ。:たいしたことない。(国土地理院2.5万地形図 館山より作図)
いずれも、海食崖型の滝です。
 滝の高さや滝面の形は、海食崖のままで、それを、できてから6000年は経っているのですが、ほとんど侵食していません。
 <海食崖型の滝の成因>




<波浪侵食の強さが違うことによる場所による谷の平面形の違い>・・・・隆起海食崖型の滝は、外海に面したところにしかありません。その理由。
 <地形図読図> 資料のp20の地図で、谷を海食崖がどの程度削っているかを見てください。
 内湾側と外洋側 岬の先端と奥の2つで見ていくと。谷が削れて消滅⇒懸谷になって上流側が残る⇒上流側のみだが懸谷なし・谷底平野少しあり⇒上流・中流も残って谷底平野がある。といった差があります。同じ隆起量でも、場所による侵食量の差で違ってくる。


◇ 波浪侵食の強さが違うことによる場所による谷の平面形の違い。模式図
◇ 事例
◇ 事例
◇ 事例





 <伊戸不動滝と御嶽神社の不動滝 ちょっと滝の地形に寄り道>

伊戸不動滝は、落差32m
御嶽神社の滝は、9m  いずれも、滝の上流に用水ぜきがあって、水量がありません。

1.滝の年代 このタイプの滝は、海食崖の年代⇒海岸段丘の年代 から、形成年代が分かるわけですが、約6000年はあるわけで、千葉県では最古の滝になります。
 ・・・粟又の滝みたいな、内陸の滝は、2000年か古くて4000年しかない若い滝です。
   伊戸不動滝             御嶽神社の不動滝
   


2.滝面の侵食 20年前と比べてみると、滝崖は凄く変化するのですが、滝面は不変。
 左画像 1880/08/18撮影 右画像 2002/12/27撮影
比べてみてください。滝面に変化がほとんどありません。










 水量が少ないだけでなく、砂礫を流さないので滝面を壊す力がない。
  1-7 館山市伊戸 4段の海岸段丘・段丘の微地形
  
◇ 地形図

ここは、沼Ⅰ面からⅣ面までの4段の岩石段丘が全部そろっているところ。
最近隆起した、大正テラスの地形も現在の波蝕棚の地形も観察できます。

 というわけで、

<机上実習>
 A3版の地形図を使用。
 1.地形図(2mコンター)の等高線を、30mから下を塗ってください。
   最初に、30,20,10mを青で、のこりの2mごとの線を赤で塗ってください。
 2.カラーの空中写真を実体視しながら、段丘面を縫ってみてください。・・・濃く塗   らないこと。  
 3.平砂浦の戦後まもなくの空中写真もあるので、眺めよう。


<現地観察>
 当日、地形図と空中写真を持ってきてください。
1.現在の波蝕棚地形
2.大正段丘の地形
3.元禄段丘の段丘崖と段丘面の地形
4.もっと上の段丘面と段丘崖の地形 を、歩いて観察してみます。

を観察します。

 ・地図上で、現在地点を常に確認しながら歩く。ついでにキョロキョロ。
 ・現成の地形が、隆起して段丘地形になるに際して、同じか違うか。
 ・人工の地形と自然のままの地形、みわけよう。
 ・地形分類しながら地形を見よう・・・地形分類を現場で確認しながら見る。
 
 ・現地で読図する⇒ 同じ隆起段丘地形でも、2タイプの違った地形があります、
  ⇒どれでしょう?。 これが、ここの観察のポイント。
   ↑
  地形のパターンをみる。






<岩石海岸段丘の地形タイプ>・・・海食崖の平面形で、


1.侵食が進んだ海岸(外海向き・岬先端) 波蝕棚の発達していたところ

海岸と海食崖に平行した直線的な段丘崖
海進前の地形(山や谷)は、跡形もなし。
等々のある波蝕棚が陸化した地形
凸部は人工的に削られ、凹部は埋められる。















2.侵食が進んだ海岸(外海向き・岬先端) 侵食入り江になっていたところ

海食崖に平行した入り江の段丘崖
海進前の地形(山や谷)は、跡形もなし。
侵食による浅い入り江
祖流の崖錐、礫浜海岸起源の砂礫でできた入り江底が陸化した段丘














3.侵食がある程度進んだ岩石海岸(内湾の岬先端)

谷の跡が海底に残り、山の輪郭が波蝕棚になって残る。
岬と入り江の凹凸のある海岸。
リアス式海岸の岬が半分くらい残る。
段丘面の幅が狭く、連続しない。
リアスの入り江の跡が、狭い谷底平野として残る。
リアスの岬の先端部分は波蝕されて現海面に近い波蝕棚となる。




  1-8 館山市見物の大正ベンチ

 地形を見る

 畳石は、
 1-9  鉈切洞窟 隆起した海食洞と岬、離れ島

沼Ⅱ面上の、離れ島と岬の跡です。岬には、沼Ⅰ相当の位置の海食洞があります。

鉈切洞窟
  海食洞 ついでですので、どれが弱層で、どうゆう風に洞窟ができていったのか、見てください。


これはなんだ?  
珍しくないので、大事にされない。


これはなんだ? 珍しいので、ご神体にされていた。

  
 1-10 沖ノ島 海岸に縄文早期の遺跡

 沖ノ島の海岸の海抜0m以下の潮間帯で、縄文早期の遺跡が発見され、発掘調査が行われました。
 現在、現地に行っても何にも見えないので、心の目で見るしかないのですが、非常に珍しい時期と立地の遺跡で、遺跡の地層も興味あるものです。
 縄文時代早期(縄文海進極盛期より前の急な海面上昇期)の土器のほか、石器、骨角器、魚骨、イルカなどが出土した。年代は、約8700年前(最近の年輪補正で約7800年前)
堆積物からは、陸上の湿地堆積物で、現在の-2~3mの所に当時の海面があった。

1.房総半島南部のような隆起地帯でなら、この時代の地層が発見されるということが、実証された。
2.なぜ、この地層が残っていたのか・・・残っていたから残っていたんだとしかいえないのですが、実はとても不思議。
 ただ、今日ずっと見てきたことですが、外洋に面した浸食の激しいところだと、このような地層が残らないので、内湾の侵食の少ない環境だったからとは言えそうです。

文献:千葉大学文学部考古学教室(2006) 千葉県館山市沖ノ島遺跡 第2・3次発掘調査概報 45p

◇p29、p30の図
□画像:鷹の島、陸繋砂州、遺跡の場所
 講義編 ・・・現地観察編の前置きとして紹介したものです。参考にご覧ください
2-1 開催要項

房総の地形をたずねる 房総南端の地形1―洲崎半島ー

 地学野外観察会「房総の地形をたずねる」は、房総各地のかわった知られざる地形の紹介を通して、地形の見方・調べ方を学び、地形の理解を深めることを目的としています。
 今回は、房総半島南端の館山を訪ね、地震性の地殻変動によってできた海岸段丘、旧海食崖とそれに懸かる滝、強い西風によって丘陵にのり上げた砂丘砂など、海岸のいろいろな地形を観察します。

(講義編)

1 日時:平成19年10月21日(日)10:00~16:00
2 場所:中央博物館研修室
3 内容:野外で地形を観察する前に、地図や空中写真、鳥瞰図、斜め写真、ブロックダイヤグラムなどを見ながら、地形の見方調べ方を実習します。
  今回は房総半島南端のいろいろな地形について解説します。
4 千葉県立中央博物館・友の会共催
5 担当者・講師:八木令子・吉村光敏(地学研究科)
6 日程:
 10:00~12:00 房総半島南端の地形地質
  ・房総半島南端の地形地質の特徴
  ・地震性の地殻変動による海岸段丘について
  ・海岸地形のいろいろ(場所による違い)
  ・観察ポイントの説明
 12:00~13:00 昼食
 13:00~16:00 観察ポイントの地形を見る
   ・館山市伊戸の海岸段丘
   2500分の1地形図から等高線を読みとる
   空中写真を見ながら段丘区分
7 対象及び定員 :高校生以上 22名
   (原則として10月28日の「房総の地形を訪ねる 現地編」との連続受講者が対象)
8 持ち物:筆記用具・昼食

(現地編)

1 日時:平成19年10月28日(日)8:00~18:30
2 場所:房総半島南端
3 コース:
JR千葉駅東口NTT前集合(8:00)-松ヶ丘IC-市原IC*-富浦IC-STOP 1(10:00 JR館山駅*:元禄汀線)-STOP 2(館山市藤原:平砂浦海岸遠望)-STOP 3(平砂浦サンドスキー場跡:山にのりあげた砂丘砂)-STOP 4(弁天島*:元禄地震で隆起した島)-STOP 5(12:30平砂浦海岸:大正期以降の砂丘)-STOP 6(御岳不動滝:旧海食崖と懸谷状の滝)-STOP 7(館山市伊戸*:昼食、4段の海岸段丘を歩く)-STOP 8(館山市見物*:大正段丘と元禄段丘)-STOP 9(館山市浜田鉈切洞穴:隆起海食洞穴)-STOP 10(沖ノ島:陸けい砂州と縄文遺跡調査跡)-JR 館山駅*(16:30)-富浦IC-市原IC*-松ヶ丘IC-JR千葉駅(18:30予定)
  *地点ではWCを利用できます
   観察地点が盛りだくさんなので、時間によっては省略する場合があります

4 千葉県立中央博物館及び友の会 共催
5 担当者・講師:八木令子 吉村光敏
6 移動方法:バス(友の会の協力による)
7 対象/定員:高校生以上 22名(10月21日講義編との連続受講者)
8 参加費:保険料 50円 バス代(実費)
9 雨天の場合:小雨決行・雨天延期(天候によっては内容を変更する)
  (実施の決定については10月27日正午に行い、必要な場合連絡する)
10 服装:汚れてもよい服装・履物(膝までの長靴、スパッツなどがあるとよい)
11 持ち物:昼食・飲み物・軍手・筆記用具・雨具など
 
◇房総半島の海岸地形の分布
(千葉県の自然誌 本編2 千葉県の大地より)
 2-2 房総半島南端の地形地質概観

<房総半島南端の地理>

房総半島南端の丘陵のうち、鴨川低地より南の丘陵を安房丘陵といい、このうち館山平野より北を安房丘陵北部、南を安房丘陵南部としている。

安房丘陵南部は白浜丘陵、館山丘陵とも言われ、最高点は南東部の高塚山(標高216m)で、そこから洲崎にかけて東西方向に標高200m以下の山が並ぶ。

 房総半島は海に囲まれており、現在埋め立てなどでほとんど人工海岸となっている東京湾岸の海岸、九十九里浜、房総南部の内房、外房海岸などがある。

内房は富津の磯根崎から洲崎まで、外房は洲崎から太平洋側の太東岬までで、いずれも磯(岩石海岸)と浜(砂浜海岸)が交互に分布している。






<房総半島南端の地質概観>

房総半島南端の基盤の地層は、中新世の西岬層や鮮新世~更新世の千倉層群、豊房層群で、嶺岡山地の地層などに比べると比較的新しい(侵食されやすい)。

今回の調査地域はほとんど西岬層の分布地域で(平砂浦の砂山や伊戸の大正ベンチなど)、砂岩凝灰質泥岩互層を主体とし、スラストによる地層の繰り返し、乱堆積層が頻繁に見られる。

STOP2の館山市藤原の丘陵(学校の裏の露頭)は中期更新世豊房層群の東長田層で、シルト勝砂岩凝灰質シルト岩互層及び礫岩からなる。


房総半島南部の地質 層序概念図

館山地域地質総括図(川上・宍倉2006:館山地域の地質)

 2-3 地質図

 5万分の1 館山図幅
2.現在、

 2-4 房総南端は第一級の隆起地域

・房総半島南端は更新世中期に深海底で堆積した豊房層群が地表に出ていることから、隆起が著しかったことが明らかで、千m級の山があってもおかしくない!?と言われている。
・しかし安房丘陵南部の最高点は東南端に近い高塚山(216m)で、西または北に向かって全体に高度が低下する。地層が比較的新しくてやわらかいため、山体は侵食が進んでいて、いつ頃からどのくらい隆起しているのかがわかる地形的な証拠はほとんどない。
・房総南端は、三浦半島南部や大磯丘陵南西部とともに、完新世において最も地殻変動の激しいところである。ここが世界でも第一級の隆起地域であることを示す地形的な証拠となるのが、丘陵を取り巻くように階段状に分布する海岸段丘である。

歴史地震に伴う地殻変動:川上・宍倉(2006) 5万分の1 館山地域の地質より

・房総半島沖合の相模トラフのプレート境界でくり返し発生する大地震に伴って(図1)、房総南端は隆起している。
・1923年の大正関東地震(M7.9)では、館山市布良で最大約2m隆起したことが測地から明らかになっており、浅海底(波食棚)が隆起したことが報告されている。この時離水した波食棚は大正ベンチといわれ(表紙の写真)、現在の海岸線にそって断続的に分布している。
・これ以前で歴史的に知られる大地震は、1703年の元禄関東地震(M8.2)で、当時の測地記録はないが、古文書や古絵図から、房総南端の各沿岸が隆起、離水していたことがわかっている(図2)。沿岸に発達する海岸段丘のうち、一番低い沼Ⅳ面が元禄地震時にできた面で、元禄段丘といわれる。この段丘面の内陸側には、かつての海面付近で形成された波食棚、ノッチなどの地形や潮間帯に生息する生物遺骸が残っており、その分布高度は南部で6~7m、北部で4.5mである。これらの高度から大正地震時の隆起量を差し引くと、元禄地震による隆起量は3~6mと推定され、大正地震の倍以上の大きい隆起をしている。また元禄段丘は幅も広く、大きい隆起によって大正ベンチより広大な面積が離水したと考えられる。
・元禄段丘より高い沼Ⅰ~Ⅲ面は、元禄段丘と同様に幅広い面をもち(沼Ⅰ面は場所によって断片的)、よく似た形状を示す。これは元禄地震と同規模の大きい隆起で離水し、形成されたためである(図3)。
・それぞれの形成年代は、沼Ⅰ面:7150年前、Ⅱ面:4950年前、Ⅲ面:2950年前と推定され(cal.年代)、2000~2700年間隔で元禄地震のような大きな地震(元禄型地震)が起こっていたと考えられる(図4)。
・最近の研究で、広い段丘面の境界付近は、高さの低い、幅の狭い何段かの面に細分できるとされ、それらは大正地震と同規模(大正型地震)の1~2mの隆起で形成されたと考えられている(図5)。
・沼Ⅰ面の離水年代がおよそ7000年前(cal.年代)で、当時の海岸線が最高で約30mの標高にあることから、完新世中期以降の平均隆起速度はおよそ4mm/y.である。
・房総南端では、相模トラフ沿いを震源とする地震が、約7000年前以降少なくとも15回発生しており、再来周期は平均すると約400年と推定される。そのうちの数回に1回が(2000~2700年間隔)が、隆起の大きい元禄型の地震であった(図6)。

図1 房総南端の海底地形と歴史地震の震源域


 図2 歴史史料から 海岸線の位置を読む (白浜町)



図3(この図では大正ベンチの分布は省略されている)


図4 

ここに示されている年代値は、中田ほか(1980)の年代を最近の知見(年輪年代学の進歩により、完新世の放射性年代測定値がより高精度で求められるようになっている)に基づいて補正したもので(cal.y.B.Pと示す)、中田ほかでは、沼Ⅰ面:6150年前、Ⅱ面:4350年前、Ⅲ面:2850年前(従来の放射性年代測定値:y.B.P.と示す)としている

図5 図3X-Yの地形断面(広い面の境界に小さな面が数段ある)


図6 房総南端の完新世における地震隆起の発生周期



参考資料:「千倉の海岸段丘-地震隆起の記録を残す侵食性の段丘群-」
         「コラム 段丘面と段丘崖、旧汀線高度」
2-5 海岸地形にもいろいろある(場所による違い)

海岸地形にもいろいろある(場所による違い)
          ・砂浜海岸と岩石海岸
          ・穏やかな内房と波の荒い外房
          ・地質の違い(岩石の固さ、透水性などの岩相、走向傾斜など)

砂浜海岸

砂浜海岸の微地形(鈴木,2000)      
   参考資料: 「館山平野の海岸段丘-砂浜海岸が隆起した地形-」

岩石海岸の地形:場所による違い(千葉県の自然誌 本編2より)
・模式的な岩石海岸


・ 外房で波が強く隆起量小


・南房、波強く、隆起量大


・内房、波弱く、隆起量中

 <引用文献>
◇館山地域地質総括図(川上・宍倉2006:館山地域の地質)
千葉県の自然誌 本編2 千葉県の大地より
千葉大学文学部考古学教室(2006) 千葉県館山市沖ノ島遺跡 第2・3次発掘調査概報 45p 

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