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 考察 
 1 遷急点の対比・・・時期の面から滝相互の関係をさぐる。
 2 チャートの滝の滝面・・・岩質の面から滝の類型をさぐる
   
考察 1 遷急点の対比・・・時期の面から滝相互の関係をさぐる。

今日観察した、千足沢と払沢川の縦断面って、形が似てますよね。
この2つの川の間には、流域の地質は違っても、北秋川本流の下刻に対応して変化したという、共通の歴史があるはずです。
それを、探ってみましょう。

千足沢と払沢川の本流との合流点の標高を同じにして、河床縦断図を合成した図 を作ってみました。  

千足沢と払沢川で河床勾配は異なるが、旧河床を描いてみると、それぞれ、図の左端=本流との合流点で、2つの川のそれぞれの旧河床が同じ比高になる・・・と、私は推定してます。
つまり、その時期の本流が同じ比高にあるってことで、支流の河床に本流の河床が対応しているとすれば、2つの支流の3つの時期の旧河床は、それぞれ同じ時期の本流に対応して作られた河床だということになります。
本流の河岸段丘面とそれにつながる支流の河岸段丘面との関係で類推するとわかりやすいかな。
 ↓
というわけで、それぞれの川の旧河床1〜3が、同時期のものということになります。
 ↓
すると、形成されはじめの時期が、旧河床1、2、3の時期の間にあたる、各遷急点遷急点についても、それぞれ同時期ということになる。
 ↓
つまり、滝が形成された時期が、3期あって、それが、現在まで後退しつつ現在の姿になっている。
 ↓
えーと、形成が同時期の滝は、「同期の滝」と呼ぶことにしてますので、天狗滝と払沢滝は同期の滝、千足沢の下流と払沢の下流にある第3遷急点の滝も、同期の滝です。
 この2つの支流は、すぐ近くなので関係が見やすい例だと思います。滝同士の関係を、他の秋川流域の滝でどうかなと考えてみると、以前滝めぐりで訪れた、南秋川の三頭山麓の、三頭沢とハチザス沢の遷急点との関係をみると、三頭沢の夢の滝とハチサス沢の九頭竜の滝が第3遷急点の滝、 三頭沢の大滝が第2遷急点の滝 にあたると考えられます。
 逆に、第2遷急点は、どの支流にもあるはずですので、この関係を使って、未知の滝の所在予想もできるわけですね。
 また、なぜここに滝があるのか、ということを考えると、つい、滝の岩石の硬さのせいだとばかり考えがちですが、遷急点等の河川の地史から考える事も必要だと、わかると思います。

 以上は、ささやかな話ではあるのですが、いいたいことは、滝は1つだけの孤立した現象ではなく、離れた川の滝同士の関係があり、それを調べる方法があるということです。 ちょっと哲学的ですね。
<念の為に・・・この話、全部信じてはダメですよということ>
 ところで、慧眼の士は、「上の縦断面の旧河床線の引き方に理由が書いてないぞ。その理由のはずの支流の段丘面や旧河床の礫層の記述も無い」。 これは、考えだけの砂上の楼閣、あるいは、ただの法螺では、と疑いをもたれたのではと思います。

 そうです、その通りです。この2つの支流には、支流沿いの段丘面や旧河床の礫層らしきものが、一見して見当たらないんです。で、旧河床の微地形や礫層を探して、山の斜面を這い回り、細かい探索と調査をやらないと確実性のある線は引けません。・・・だけど、そうなると、本格的調査になってしまって、とても手が回りませんよね。
 そこで、私の今までの経験と、他の論文等での事例から、「こんなもんだな」と、線を描きました。ですので、かなり正しいはずですが、100%正しいかどうかは・・・分かりません。(^.^)  こうゆう記述を、予察 というんですよね。結果として、「当たればよし。当たらなければ、まあよくあることと、笑って忘れる」 ということで、ご笑覧ください。
 第2遷急点、第3遷急点の対応については、9割方間違い無いでしょう。・・・エヘン。
 第1遷急点については・・・6〜7割ってとこですね。(^.^)

●考察 2 チャートの滝の滝面・・・岩質の面から滝の類型をさぐる
滝面の形は、現在の滝の動きを反映した地形です。これには、削られる側の岩石の抵抗が反映されるので、岩石ごとのタイプがでるとも予想されます。
秋川、多摩川流域で今まで見た滝のうち、滝面がチャートでできている滝を集めて、比較してみました。
 6つ滝を出します。

 左から
 
1.ネジレ滝
2.海沢大滝
3.三ツ釜滝

 いずれも
 海沢渓谷
 

 左から 4.天狗滝
      5.無名滝
      6.神戸岩の滝
  この6つに共通する形としては・・・
  線滝であること。
  円弧状であること
  直下型でなく急傾斜型なこと。・・・直下型が無い
 が共通してます。

線滝、円弧状滝面というのは、気づきやすい形ですが、直下型が無くて、急傾斜型であることはすぐには気づきにくいと思います。

 滝を作る岩石としては、割れ目が少なく、硬い=侵食しにくい岩石の筆頭ですので、線滝になることや、削れても円弧状までというのは、さもありなんと思います。
 急傾斜になるのは、硬いからなのでしょう。より硬くない、侵食に弱い岩石だと、直下型の滝ができてますからね。
 たとえば、堆積岩系のより侵食されやすい岩石ですと、掘り込まれて垂直の滝面の直下型の滝面になりますし、払沢滝や近所の白倉不動滝のような、細かく砕ける岩石の場合は、崩されて垂直の滝面ができています。

 「硬い岩は垂直の滝面(直下型滝面)にならない」というのは、おもしろい問題ですね。
  同じチャートでも、その内で違いは・・・
 連瀑になる、段瀑・壁状になるの2種がまず目につきます.
 が、岩石が反映した地形というより、滝の水流による変化の地形ですので、これは無視するとして。
 1、2と3〜6の違いは、
チャート層の割れ目・断層面に沿う溝状の滝面型 
  滝面の形が割れ目の形に規定され、溝にえぐれる。滝面そのものは割れ目の中の破砕された岩肌になる。
チャート層の葉理面等に沿う壁状の滝面型
  弱い所がないので、浅い円弧状。滝面表面は平滑でのっぺりしている。層状チャートの葉理面がその中でも割れやすいので、滝面が葉理面になっていることも多い
 に、分けられます。
 チャートはすごく硬くて緻密な岩石なので、まず比較的楽な所は、チャート層にまばらに入っている、割れ目とか断層面のみ。上の2種は、楽できているか、できていないかの違いですね。 
 チャートの滝は、全国に万のオーダーで存在すると思います。この2種だけでなく他のタイプも存在するでしょう
 他の事例など、お知らせいただければ幸いです。
 この項の結論は、あたりまえのことですが、滝を観るには、岩石も重要だよ、ということですね。

 以上で、滝の地学観察会の見どころと、まとめはおしまいです。 あとは付録。
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