2005年友の会滝めぐり観察会・神流川、両神山の滝 記録 その3 白水の滝、 叶山の地形
  <観察ポイント 白水(しろみず)の滝>

 石井良三氏撮影提供
 <現地資料>
  白水の滝 ・・・・地下水型の滝
   
 三波川の支流上流にある。地下水型の滝。
 叶山の石灰岩体の岩峰をなしているが、その北面、巨大な岩壁下部からの湧水による。
断層直上の洞窟より湧水し、その下の、秩父系北帯万場層群 輝緑凝灰岩上の斜面を流れ、神流川支流に懸谷の形で流下する。

水系:神流川水系支流
流域面積 測定できない。
地質・岩質:石灰岩の洞窟より湧水。秩父系北帯万場層群 輝緑凝灰岩上を流れる。
地質構造: 記述の必要なし
遷移点の成因: 記述の必要なし。
遷移点の形:侵食されていない。
滝面の形:滝面上に草や潅木が生えていることからわかるように、水しか流れない水量の変わらない滝。礫も砂も流れてこないので、侵食力がなく、極めて無能な滝でしょう。滝面は、ほとんど侵食されていない。
地図はこれ。国土地理院2.5万地形図「両神山」+5万地質図「万場」より作成
緯度経度(世界座標):
北緯36°08′19.1″ 東経138°51′40.0″

ここからの、叶山北面の断層面の大岩壁は一見の価値ある奇観です。・・下は、白水滝より見上げた岩壁。

   <追加説明>
 ● 地下水型の滝 とは、
人間とのかかわりが多い滝でもある

 ● 地下水型の滝の見分け方
●滝の成因の種類(房総の滝を例に) ・・・・  地下水型の滝   滝おやじ作 「滝の地学v3」より

 地下水が、崖や斜面の中途から湧き出して、滝になっているものです。


 洪水時に水量が増加して砂礫を流すといったことはありませんし、水源なのですから遷急点という概念など当てはまらないので、自然の川の途中にある滝とは違ったものと考えたほうがいいでしょう。

 房総の滝については、この種の滝を以下のように分けました。
 ・湧水型の滝:自然にできて、人工の加えられていない滝 :もとは自然の滝か泉で、人工が加えられているが、落ち口はほぼ元の場所の滝
 ・人工の滝:水源は自然の泉だが、水源から離れた場所に導水して、人工の滝にした滝
 ・表には入れず:「滝」と呼ばれているが、落差が1m程度の低くて今の観念では泉のもの。:水源が人工のものは、勿論含めません。
 房総では、下総地方のような未固結な地層からなる台地の広がる地域に多い滝で、台地の段丘崖斜面の上部に地下水が湧き出して滝となっているものです。しかし、滝の存在には人間が関与していることが多く、厳密な意味で自然の滝は、上総地方のやや固結した丘陵斜面から湧出する滝にしかありません。
 下総地方のような、未固結な地層の崖では、この種の滝ができたとしても、湧水点下の崖が水流でえぐれてしまって湧水点自身が後退し、さらに、崖の上の方から崩れてきて泉の下流が埋ってしまい、そのままでは滝は長つづきしないで、泉と急な小川になってしまうのが普通です。そこに、人間が手をいれ、人工化して滝を仕立てることが行われました。もっと正確にいうと、未固結な地層の地域なので滝がなく、滝を作りたい人間の方が、適地を探して滝を作ったのです。
 これらの滝の作成目的は、社寺の霊地としてまた滝の水を浴びて修業する水行場として作成されたようです。水行は、当時は病人の治療としても行われたため、滝の作成は、信仰の形をとっていますが、現在の信仰という概念には収まらない意味がありました。勿論、この滝の水源は、例外なく水田の用水源として利用されていますが、水行の場として滝を設置するのは用水源としての利用より後に付け加わったことのようです。
 下総地方の人工化された滝では、湧水型の滝は、海上町岩井の岩井不動境内にある大滝、人工の滝では大網白里町南玉の南玉不動の滝が代表例としてあげられます。 ⇒詳しい地学紹介はこちらです
 上総地方では、崩れてきていますが、君津市寺沢の寺沢不動滝があげられます。この滝は自然の滝で、用水の水源という機能のみのようです。
 最近は地下水の減少の影響を受けて水量も乏しくなり、水行も行われなくなって滝の維持管理がなされなくなり、荒れてしまったものが大部分になっています。


 房総の場合は、自然状態では滝が長く続く条件が無いわけですが、他県の場合は、自然の状態で湧水型の滝が長く存在する所があります。1つは、火山岩が分布する地域です。 ここでは、谷壁の途中に溶岩流等の割れ目を通った湧水があり、滝になっていることがあります。滝下の崖の岩が堅く、かつ、崖下に川が流れていて崖が埋らないといった条件があれば、自然状態でも滝が保存されます。富士山の白糸の滝などはこのタイプのようです(写真で見る限りは)。
 もう一つは、石灰岩地域ですね。石灰岩の山から、湧水がある場合に、硬い岩ですので、滝になる例が多いと思います。 ・・・・まさに、白水の滝が、この例ですね。


 ● 地下水型の滝の見分け方
 


<作成中>

   <現地アルバム> 石井良三氏作成原本より編集転載。画像と文章は石井氏による。

<午前1030分 万葉の里出発>
<午前1040分 白水トンネル入口に到着>


 
右手の落水が白水滝


 講師が、「無能な滝は一目で分かる」と力説中。

 左手 白水の滝 奥に、マイクロバスが見える

 関根さんが、水の落ち口まで登った。鍾乳洞から出た水はコンクリートの堰で止められた後に流れ出しているとのこと。幻滅するから行かない方がいいとのことだった。
 石灰岩の洞窟より流れ出し、万場層群 輝緑凝灰岩上の斜面を流れるが、礫の流出がないため侵食力のない極めて無能な滝との説明があった。


滝面の岩は、万場層群の黒っぽい輝緑凝灰岩

新緑で明るい感じ。

無能かもしれないが、なかなか綺麗な滝である





<観察ポイント 叶山の地形> ・・・石灰岩の岩壁と重力性の割れ目

 石井良三氏撮影提供
 <現地資料>
叶山の地形 ・・・
石灰岩の岩峰  
  大岩壁 について
 石灰岩からなる、東西方向の断層面が掘り出された同じ方向の大岩壁です。
 2万年前ぐらいから、神流川の下刻に対応した侵食によって掘り出された地形なのでしょうが、岩壁は、南北方向の断層の凹み以外は、侵食溝の凹凸がない形です。・・・東西方向の断層面に沿って剥がれて岩壁ができた後、あんまり変化してないということなのでしょう。
 一般に、崖というものは、崩れている最中なので新鮮で、植生に覆われないのだ、と言うのが常識ですが、この崖について言えば、ずっと昔からある古い地形なのに、急でほとんど崩れず、草も生えないということになりそう。不思議です

「叶後の牢口」について。・・・かのううしろのろうくち、と読む
 左図の左に見える、細い切れ込みが、牢口。上の地質図の南北の断層に対応している。断層面が侵食されてでできたということになっているようですが、断層に沿って山が割れて割れ目が開いてできた地形ではと思います。断層面を掘り出して作った割れ目にしてはシャープすぎる。

 <さらに、考えたこと>
 では、右上の切れ込んだ割れ目はなんじゃ? ということになるが、地形図ではずいぶん切れ込んでいますが、地質図には断層が描いてありません。
 断層が確認できなかったので記入しなかったのかもしれませんが、また、割れ目が上のほうだけで下にまで届いていない、つまり、断層でないから、記入しなかった、とも考えられます。
 つまり、上部だけ割れた割れかけであると考えると、石灰岩体が侵食によって、周辺の地層がなくなって屹立するようになったので、叶山の東端部分が、自分の重みで割れて傾いているのではないかと思えます。
 そう思ってみると、上の画像は、歯ぐきが駄目になったので、各々の歯が、グラグラと将棋倒しになりつつある私の下顎の歯のレントゲン写真風に見えますね。
 とすると、地質図の南北性の断層は、東西方向の構造性の断層とは時期も成因も違う、最近の重力性の割れ目であるってことになるなあ。 (^.^)・・・・なかなか、面白い。
   <追加説明>
 ● 叶山の形

 ● 石灰岩は侵食に強い岩石。

 ● 石灰岩の岩体の形について、
  サメの歯みたいに薄く尖っていますが・・・

 ● 秩父系北帯の石灰岩の山
 <作成中>
すごい岸壁ですね。







   <現地アルバム> 石井良三氏作成原本より編集転載。画像は石井氏撮影提供。

<午前11時05分 叶後の牢口>

 天気が悪いの、カメラが悪いのか?
 肉眼では、石灰岩の絶壁が迫力ある景色に圧倒される。
 断層に沿って山が割れて割れ目が開いた地形との説明。


   <絶景なので、みんな、シャッターを切る>  頂いた画像の一部

横須賀英二氏撮影提供


 講師が下見の時(8月)に撮影。 神ヶ原より。気に入ってます


マイクロバスの窓越しに写す。
横の線は窓ガラスだと思う。

 石井良三氏撮影提供

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