このHPの滝地形記述用語集  021028 更新

滝の地形記述用語は、滝おやじの作成したものが多く、知らない人は意味が取れない所が多々あるだろうと思います。
一般的でない用語の説明を作っておきます。

<河川縦断の地形>
遷急点・遷移点:地形学の普通の用語です。
  
河川の河床縦断面(川沿いに高さと距離をとって、河床の断面形を描いた図)は、一般に下に凸な指数曲線になる。しかし、その途中で、段になったり、勾配が急変することがあり、そこを遷移点といいます。遷移点のうち、急になる地点を遷急点という。

遷急区間
 河床縦断面上では、遷急点より下流部分についていうと、遷急点が段の場合は、滝一つで、図上では、段差ですが、滝の連続や急流になっている場合は、区間になります。この遷急点より下流の急な区間を遷急区間という。しばしば、遷急点と遷急区間は同じ意味に使われることがある。

瀑布帯
 滝が連続している所。遷急区間との関係は、大きく地図でみて決めるのが遷急区間。地べたを這いずって滝の様子を見て決めるのが瀑布帯です。ということで、遷急区間に、瀑布帯が複数あることはよくある。

同期の滝
 同一水系の谷で、あるいは、他の水系の谷で、複数の遷急点がある場合、その形成時期が同位置のものを同時期の遷急点というが、その遷急点に含まれる滝同士を、同期の滝と呼ぶ。

<瀑布帯の地形>
下滝・本滝・上滝
 瀑布帯の中に複数の滝があるが、一番大きな滝(規模の大きな滝が複数あることもある)を本滝、その下流のより低い滝を下滝、上流の滝を上滝。→たとえば、上滝がある滝は、もとの滝の頂上部分が分裂して上流に動いたものと考える。→そう思うと滝の見方がガラリと変わります

連瀑・連瀑帯
 瀑布帯のうち、滝がすぐ近接して入る複数の滝を
連瀑といい、その区間を連瀑帯という。
 □□連の連瀑という様に使う。
 一般に、いわれる「滝」の単位としては、連瀑を単位とするのが、よいと思われる。
  たとえば、袋田の滝は4連の連瀑ですが、4つの滝というより、1つの「滝」と言った方が便利です。
  地形学的には4つの別々の滝でも、連瀑の場合1つのものと考えて、別に分けなくてもよいというわけ。
  □□滝という場合、今までの歴史的な滝の概念からいうと、連瀑が単位になっていることが多いですから、
  景観としての滝の記述には、連瀑を使うといいと思います。要は、景観としての滝と地形としての滝を分けて
  考えておけばいいということです。


直な滝・ねじれ滝・曲がり滝
 瀑布帯の平面形と曲流との関係の用語。直な滝=直線河道の滝(滝は平面的にまっすぐ) ねじれ滝=曲流河道の滝(滝が平面的に曲がっている)。意外と少ない。
曲がり滝=曲流河道の滝(曲流の曲がり角が平坦になっていて、平面が直線の複数の滝が 折れ曲がる形で曲流している瀑布帯。これが多い。

<個々の滝の地形>
滝面・滝崖
 滝面:滝の水の落ちる部分。滝崖:滝面や河床以外の滝の河道・滝壷の周りの崖。
 この2つは、滝によってできる崖だが、崖のできかたが違う。
   滝面:水流が作ろうとしている作用に、岩石が抵抗している部分。
   滝崖:風化作用や重力の作用が働き、それに岩石が抵抗することでできていく地形。


面滝・線滝
 滝面と河道幅との関係による用語。面滝は、滝面の幅が川幅と同じ場合。線滝は川幅より狭まる場合。この違いで、水流のエネルギーの使用方向が異なるので、大きく違ってくる。面滝:三条の滝。線滝:仙娥の滝かな。
  なお、面滝の平面形は、人工堰堤のように河道と直交するのが、定型である。
河道と斜行する場合は、岩石の構造(層理断層節理)の影響によることが多い。
曲流部分にある滝は、本滝が屈曲部の入口か出口にある・・滝面が上流の河道と直交する場合が多い。

主滝・副滝
 滝面を平面で見たとき、滝面が一様でなく、えぐれている部分があるとき、えぐれている部分を副滝、えぐられている部分を主滝洪水時には両方の滝とも水が流れる(主滝部分が水が流れなくなったらそこは滝面でなく、副滝部分だけが滝面となり、線滝になる。)

<滝面の地形>
壁状(型)滝面・複合型滝面
 面滝が主滝副滝に分かれている場合、複合型滝面ということにしています。分かれていなければ、下から見て一様な壁状なので壁状。一般に滝面の平面形は直線になる。
  馬蹄形型滝面
 壁状滝面の1種。 幅が広い壁状の滝で、滝面の平面形が直線でなく馬蹄形になる場合。
  張出し型滝面 
 壁状滝面の1種。 硬い岩で、高い滝の時よくできるようだが、滝面の平面形が直線でなく、下流側に 尖って張り出す場合。この型は訳わからくて面白い。
 張り出す結果、洪水時以外は滝の落ち口で水が分流します。これが複合型化すると滝口で2本に分流し、中央にでっぱった高まりのある特徴的な形になる。この微地形の成因はよくわからないのですが、滝面尾中央部分の方が水流の研磨作用や、運んでくる礫の衝突は多いはずなのになぜでしょうね。狭い滝面の中央と両脇で条件が違うとすれば、滝面が常に濡れているか、乾くことがあるかの差で、滝面の風化作用の強弱の差によるものでないかなあ。
  両溝型滝面
複合型滝面の特殊形。普通、副滝は一つで、あるが、副滝が2つあり、おおくは、滝面の両端にある場合。おおまかに割れやすい岩石の場合に発現言しやすいようで、花崗岩型の滝に見られることが多いようである。張出型の発展形の場合もある。

円弧状・溝状・掘出し溝
 滝面の平面形。副滝の形状。円弧状:副滝や線滝がまだほとんど溝を掘り込んでない状態。平面形が滝壷の丸みに対応しているので。
 溝状:副滝、線滝が溝を掘り込んでいるばあい。溝の形状で、直線溝、折れ曲がる曲がり溝、歐穴小滝壷連続型等のタイプがある。曲がり溝型はなぜか直角に近く曲がることが多いようです。

<滝面の断面形>
上部滝面・落下境界線・中部滝面・下部滝面
 滝の断面は、滝の頂上のやや急になる部分(ここではまだ水が流れている)、落下境界線を境に落下する部分、落下した水が落ちて再度流れ出す部分の3つがある。
 滝の高さはどこからとるかで、よく、上部滝面を入れるか入れないかの議論になりますね。

<地層と滝の方向との関係>
順層の滝・水平層の滝・逆層の滝
 滝の下流方向へ地層が下がっている場合:順層。
 上がっている場合:逆層。

 房総の泥岩層などでは、順層だと地層の層理面。逆層だと地層の節理面が影響して滝の断面形に違いが出てきます。また、特に順層の場合、滝の下流で直角に曲がる(河道の方向が地層の走向と傾斜に適従する)傾向があります。

<滝面と滝壷との関係>
 滝面全部に対応して、滝壷ができている場合:
全面滝壷
 一部しかできていない場合:
部分滝壷
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<岩石の構造(地層面・層理面・断層面等)と滝の方向との関係

順層の滝・水平層の滝・逆層の滝
 滝の下流方向へ地層が下がっている場合:順層。
 上がっている場合:逆層。
 房総の泥岩層などでは、順層だと地層の層理面。逆層だと地層の節理面が影響して滝の断面形に違いが出てきます。また、特に順層の場合、滝の下流で直角に曲がる(河道の方向が地層の走向と傾斜に適従する)傾向があります。

<岩石の種類と滝のパターン>
岩石のタイプにより、水流への抵抗力の大小と形が違うので、同一岩石で似た形の滝の地形、あるいは滝面の微地形が見られます。いろいろな型があるとおもいますが、
 たとえば、
 未固結海成層型の滝:上総層群の滝など:砂岩泥岩、互層等で、層理面と対応する地形が
 花崗岩型の滝:完晶質で、節理が発達する岩石の場合:
 チャートの滝
 固結した凝灰岩類の滝
 溶岩類の滝
 硬く固結した火山堆積岩類の滝
 固結しているが、割れ目で破砕している岩石:古生層、中生層など。小仏層群なんかの四万十帯や  秩父帯の砂岩泥岩部分など。
 一応固結してるが、片状に破砕している岩石:片岩・千枚岩など。三波川帯の岩石など
 固結した礫岩の滝
 ホルンフェルスの滝:
 固結した火成岩岩脈


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<よく使われている滝の用語との関係>:無関係です。
 滝の景観を示す用語として、永瀬氏が例示された、直瀑、段瀑、分岐瀑、渓流瀑、潜流瀑、海岸瀑の6つの言葉があります。
 これらの用語は、はじめて滝の景観を記述しようとした点で、評価すべきものですが、もともと厳密なものでなく、詩的用語としてならともかく、滝の分類として、滝の景観記述に科学用語として使用するには、不適です。
科学的な方法論的な検討無しで便宜的に付けたというべき用語だからです。

 特に、段瀑は連瀑と階瀑に分けるべきでしょうし、分岐瀑には、ただの壁状滝面を渇水期に見ただけの場合から、複合滝面副滝円弧状、張出し型滝面、両溝型滝面 までいろいろなタイプがごっちゃになっています。 あと、潜流瀑はまだ、景観的には意味がありますが、海岸瀑、渓流瀑は他との区別の面であいまいです。

 種類が少なく、簡便な点はいいのですが、滝の形の種類が、6種類しかないといえないことからも、分類として不十分なのは明らかで、すべての滝をこの用語にあてはめると、いろんな不具合が出てきて、結局分類していることにならない、単に、分けているだけというのと同じことになります。

 数少ない滝の記述用語として大事に使ったらいいと思いますが、滝の分類として使うのは、お薦めしません。


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