利根川水系木の根沢 ひぐらしの滝 滝の地学記録カード HPトップへもどる | ||
<趣旨> 氷期の谷埋め砂礫層からの湧水による地下水型の滝。 <もくじ> 文中の図は、滝おやじ作図。無許可複製不可です。 概要 ・・・・・牛のよだれのように延々と下に続いています。 お急ぎの方は、概要だけで。(^_^.) 観光と交通 滝の成因、地形面との関係など <砂礫層からの湧水> <砂礫層の成因と谷の変遷> <氷期と間氷期の山地の谷の変遷> <木の根沢最上流の埋積谷地形> <ひぐらしの滝の砂礫層の年代・・・?> <類似の地形> 滝の諸元 <概要> 所在:みなかみ町藤原 利根川の最上流、武尊山北面を流れる木の根沢にある。 紅葉の名所・照葉峡にある11滝の1つで、最上流の滝。 主要地方道水上・片品線沿いで、標石、標石も立っていて、車からでも見える。 見た目は特に優れた滝ではないが、成因が特色ある。 滝附近の、木の根沢南岸の谷壁斜面に、氷河時代の砂礫層が張り付くように残っている。その砂礫層に溜まった地下水が何ヶ所も湧水して数本の滝となっているもの。 「ひぐらしの滝」という標柱のある滝は、その内の1本で、懸谷の沢からの水も流れるので、やや水量が多い滝になっている。 今まで御覧になった方々は、普通の懸谷の滝と思われたようで、滝の本では、特殊な成因の滝であると指摘した方はない。しかし、もしかすると、滝と言われているもので、この成因の滝は日本でこれだけかもしれない。 |
観光と交通 ページのはじめに戻る | ||||
1.滝の名称 ひぐらしの滝 観光名 水原秋桜子の命名という 2.歴史・信仰遺物 滝の利用・民俗 なし。 3.説明板等 説明板なし。 標柱と標石のみ。 標石には、「ひぐらしの滝 秋桜子」とある。 4.大体の場所 →こちら 緯度経度 北緯36°50分40.21秒 東経139°09分42.26秒(日本座標) 地形図の場所は、ここ↓ 5万地形図は「藤原」。 2.5万地形図は「至仏山」です。
5.滝へのルート 車道から見える。 この滝を見に行くなら(そのためだけに行く人がいるかどうか大きな疑問だが)、木の葉の茂らない早春がよい。葉が茂ると見えなくなってしまう。 また、冬は駄目で、11月中旬から5月末まで道路は閉鎖。 なお、滝面の砂礫層に近づくには、藪こぎと渡河しないとできない。取り付くのに意味を感じるとすればだが。 6.ガイドブックの記述 大した外見の滝ではなく、また木の葉が茂ると見にくくなってしまうようで、照葉峡の滝を全部紹介する場合でないと、紹介されないようである。 「ぐんまの滝めぐり90選」 「日本の滝4000」などに、紹介されている。前述したように、地下水型の滝であることは見落とされていて、記述されていない。 |
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滝の成因、地形面との関係など ページのはじめに戻る | ||||
洞元湖から坤六峠にいたる道沿いに流れる木の根沢の中流から、照葉峡と呼ばれる紅葉の名所となり、道沿いに11の名前のついた滝がある。 ひぐらしの滝はその最上流の滝。 流域は、須田貝花崗岩体とよばれる黒雲母花崗岩よりなり、照葉峡の滝もひぐらしの滝以外は、みな花崗岩の滝である。 ひぐらしの滝だけは、滝付近の斜面の地質が砂礫層になっている。 その砂礫層に溜まった地下水が何ヶ所も湧水して数本の滝となっている。ひぐらしの滝はその内の1本で、懸谷の沢からの水を加えた滝になっている。 周囲には同じ砂礫層から何本か滝になっている湧水がある。 左図は、ひぐらし滝の滝面で、画面上部の水は、崩落外に続く懸谷の支流からの水が混じっているが、画面中央から、多数の湧水点があることが分かる。 滝周辺の砂礫層からは、他の箇所からも湧水があり、画像の撮影を行った6月時点で、ひぐらしの滝に近接して4箇所から湧水が出て滝になっていた。 湧水は季節や降水状況で、枯れたり増えたりで増減するようだ。 |
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中央の水流が、ひぐらしの滝。、左に1筋、右に1筋 湧水の滝が見える。 | 左端の水流がひぐらし滝。 中央が左図の右の1筋で、左に中腹からの盛んな湧水が見える。 |
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<砂礫層の成因と谷の変遷> ページのはじめに戻る この砂礫層は、右の概念図のように、氷期以前の谷を氷期に埋積した砂礫層で、 それが現世(間氷期)に、再度侵食した谷によって削られ一部が残っているものと思われる。 図の凡例 +印:花崗岩 ○印:埋没谷の砂礫層 上の点線、埋積期の河床高さ。 <地形の変遷> 12-3万年前 間氷期に、花崗岩を掘り込んだ谷が作られた。 ↓ 5〜2万年ごろの氷期に、川の河床が上がり、谷が砂礫層で埋積されて、河床が概念図の点線まで上がった。 ↓ その後、再度現在へ続く間氷期になって、川の河床が下がり、現在の谷が掘り下げて形成された。 <氷期と間氷期の山地の谷の変遷> ページのはじめに戻る 中部地方以北にある、標高1500m以上の山地河川では、 間氷期に多雨、多雪、谷の下刻と峡谷・V字谷形成 氷期に、少雨、少雪、樹林帯下降、周氷河斜面の拡大、谷の埋積、埋没谷の形成 という地形の変化があることが知られている。 ちなみに、現在(1万年前からの完新世)は間氷期、12.3万年前が間氷期、5-2万年前が氷期である。 |
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<木の根沢最上流の埋積谷地形> ページのはじめに戻る 利根川最上流地域では、谷川岳東面には氷河ができ、氷河地形が残されているなど、氷期の地形、埋積谷の跡が段丘となって残っている。 木の根沢は、同じく利根川最上流地域に属する。 木の根沢水源にあたる、坤六峠周辺の山には、なだらかな斜面地形が広く分布している。 氷期に埋積された谷とそれに続く斜面と思われ、現在の河川侵食がまだ木の根沢上流部まで及んでないため、氷期の谷埋めされた斜面が広く残っていると考えられる。 |
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<ひぐらしの滝の砂礫層の年代・・・?> ページのはじめに戻る ひぐらしの滝の砂礫層は下から見ると河床から30mぐらい上に段丘面状の堆積面があるようだが、地形図からはその上80m〜100mぐらい上にも平坦面らしきものがある。 木の根沢最上流部の斜面も、上図のように、黄色と黄緑の2つに分かれそうだ。 氷期には、5万年前と2万年前の2つの氷河前進期(2つの亜氷期)があるので、この2つの埋積平坦面も2つの亜氷期に対応するものではないか、等と空想している。 |
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<類似の地形> ページのはじめに戻る ところで、こういう成因の滝は、日本の滝では、ひぐらしの滝が唯一かもと言ったが、埋没谷の砂礫層から湧水する現象は結構ある。 画像は、谷川岳一ノ倉沢のモレーン露頭。雪渓が溶けた跡に出ている河床沿いの崖である。8月撮影。 露頭の上部に、ティルと呼ばれる、氷河が運んだ岩屑からなる乱雑な砂礫層がある。 露頭の下部には、アウトウオッシュと呼んで良いのかな?、角礫層で、基質が泥の氷河融解水流堆積物がある。 ティルに浸みた地下水が、その下位の泥質層との境で湧水して滝になっている。 ただ普通は雪渓の下になっているので、夏と秋にしか見られないし、そもそも、地下水が集中してなくてチョロチョロなので、滝というにはどうも。 このように、氷期の堆積物から地下水が湧水する現象はよく見られるのだが、滝というほど、定常的に地下水が集中して湧き出しているという例はすくないようである。 |
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滝の諸元 ページのはじめに戻る |
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滝の名称 ひぐらしの滝 所在地 みなかみ町 水系 利根川水系 木の根沢 渓流名 なし。 地図 5万藤原 2.5万至仏山 緯度経度(世界測地系) 北緯 36度50分16.29秒,東経139度11分02.10秒 流域面積 ・・平方ku 地下水型なので意味がない。 滝高 15-20m(未測定) 地層 氷期の谷埋め砂礫層 岩質・構造 巨礫混じり粗粒の砂礫層 未層理 未固結 成因 地下水型の滝 ひぐらしの滝は懸谷型の滝を兼ねる。 変遷 侵食後退量 ほとんどなし。 滝面 河岸の崩落崖面に湧水 滝の形態は意味なし。 年代・同期 ー |
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参考文献 | ||||
なし |
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