2006年度滝めぐり観察会 「安房地方のよい滝」 現地資料 

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Loc.2 外野の瀑布帯

道路地図上の位置は→こちら   本滝の位置: E139.55.59.6 N35.7.01.0(日本座標)
外野不動滝(男滝) 講師撮影

名称・故事来歴・・・
郡誌等には記載がない。 発見者 君島安正氏。
    文字になったのでは、房日新聞19790325の記事が最初かも。

河川名・・・
 平久里川支流 外野川
場所・・・・・ 南房総市 外野
比高・・・・・  30m 下滝1.2(1.5m、1.8m壇瀑)
             本滝(8m)
             上滝1.2(7.2m線滝、3.6m壇瀑)
         の5連の滝よりなる。
         本滝下流で、懸谷の滝(不動の滝)、23mが合流。
成因・・・・・ 本流型の滝
地質・・・・・砂質泥岩層 無層理 佐久間層群中尾原層

変遷・・・遷急区間の位置は、特に地質の影響は認められない。
      各滝が屈曲点立地で、成熟した遷急区間の地形をなしている。
滝の形態・・・
 本滝 雌滝(不動滝を男滝として) 8m 面滝 帯瀑 壁状2段急斜型 
 上滝1 無名の滝 ナメ7.2m 線滝 直線溝型 4段緩斜型 泥岩 逆層? トヨ状の房総では珍しい形状 -
 外野不動滝 23m 懸谷型の滝 線滝 条瀑 壁状 3段直下型 砂質泥岩層   逆層 外野の瀑布帯に落下する支流の滝

見所
 房総有数の遷急区間の滝群である。 
1.遷急区間と上流下流の河床縦断
 下滝2から上滝2までの間が遷急区間で、遷急区間の上流下流はの河床縦断面を描いてみると、下の図のようになります。上流下流は、なだらかな平衡河川になっているのがわかります。上流側の谷は、地図で見ると、水田化された谷底になっています。
2.遷急区間と地質
 遷急区間は、中尾原層(砂岩泥岩互層)にあり、地質と立地との直接関係はありません。地質図の大崩層(礫岩層)との境界に、遷急区間の始まり(下滝2)があり、関係があるように見えます。その場合、大崩層が侵食に弱くて削られ、中尾原層が硬くて滝を作っている、ということになるのですが、大崩層が礫岩で、中尾原層が砂泥互層ですから、一般的な岩相と侵食のされやすさとの関係から言えば強弱が反対になります。 大崩層の露頭もなく、これ以上のことは分かりませんので、今のところ、無関係としておきます。
 外野川縦断面
遷急区間(瀑布帯)の各滝の形>

 下流側から順に、こんな滝が出てきます。

下滝2
 手前から、0.3m、0.2m、1.5m(細かいですね!)の3連の滝。川幅が下流と変わらないので、面滝です。
 形は、壇瀑ですね。手前の0.3mの前に全面滝壺があります。地層は逆層(走向に直交しているようだ・・・滝面が垂直になる傾向がある)。 
 遷急区間の始まりのところに、多くは屈曲点の手前に化石滝壺があり、屈曲点の直上に滝がある。というのはよくある形。 

下滝1

 1.8m。面滝、壁状壇瀑です。全面滝壺がありますが、埋まっている。
 地層は逆層(走向にかなり斜交しているようだ・・・滝面が緩傾斜になる傾向がある)。
 屈曲点の直上にある。
 

外野不動滝(男滝)

本滝のすぐ下流に落ちてくる支流の懸谷の滝。

23m。

線滝。条瀑です。

山口の滝と同じ形をしています。
水流の少ない懸谷型の滝はこの形多し。


本滝(女滝)

2連(1.2m、6.8m)。
この画像は、6.8mの分。

面滝 縦横比1:3ぐらいですから、幟瀑です。

壁状急斜瀑

滝下の広場は円形で滝壺が埋まっているようだが不明。

地層は逆層(走向に直交している)。

屈曲点の直上にある。
上滝1

線滝

4段7.2m。条瀑です。
直線溝状緩斜瀑
いわゆる、トヨ状の滝です。
滝下に滝壺はない。
地層はいちおう逆層ですが、走向とほとんど平行。
現在の溝状の形は層理面に沿って彫った形。

 倒木がひっ掛かっている右手の段が、以前の河床面(過去には面滝だったらしい)。

屈曲点の直上にあり。
 水量のない時、撮ったので、さえない画像ですね。

上滝1を上から見下ろす。

トヨ状(直線溝型)の掘り込みが、地層の層理面に沿って掘り込んでいることが分かる。
 
 上滝2

 階滝(2段で3.6m)。 面滝。下の部分1.6mぐらいは側壁崩壊で埋没している。・・・画像の段差は2.0m。
 埋没分を復元して、3.6m÷2m=1.8ぐらいですから、幕瀑
  壁状直下瀑。滝下の滝壺があるかどうかは不明。
 地層は逆層らしい。
 屈曲点の直上にある。
<遷急点の地形を図化して、考察>

遷急区間の平面図

測量して作った平面図です。

遷急区間の上流と下流の川幅と、遷急区間の川幅が一部を除いてほぼ同じことがわかります。

また、滝の立地が、屈曲点の直上で、屈曲点間の流路は直線であることもみえます。

この遷急区間は、滝の分裂が進み、成熟した時期のものと思われます。
 いろいろの遷急区間の平面断面図を作成して、相互比較すると、面白そうですね。

  遷急区間の断面図

平面図と同じく、測量して作った断面図です。

この遷急区間は、全体的には、滝が屈曲点立地で、滝面も急な面滝であり、変化が止まった安定した形です。
しかし、上滝1の部分だけは、線滝で傾斜も緩く、滝の変形が活発に行われていると考えられます。

<現地記録>  画像は、石井良三氏撮影・提供
以前行った時は、本滝・不動滝以外はすべて滝を登れたんですが、今回は水量が多く、濡れてしまうし、滝壺にズボンと落ちてしまう可能性ありとのことで、現地縄取り担当三明さんは、すべて滝を高巻きました。ザイル張っていくし、時間もかかるし、労力もかかって、とても大変でした。

滝の高まきで、大変だったので、全然、上に述べたような地形の解説ができませんでした。残念です。資料の図に追記して補足してありますので、ご覧ください。  
<遷急区間の遡行・・・水量多くて苦労しました。三明さん奮闘の巻>

 直前下見してなかったので、川に下りるルートが草ぼうぼう。「こっちからの方が降りやすいんじゃあ」などと、ウロウロ

結局、最初のところを強行突破するしかないことになり、戻っているところ。


竹林の中を下って、川に下りる。


浅い川を行くこと暫し。遷急区間の始まりの、最初の滝(下滝2) がでる。
水量多くて、綺麗です。
 ところが、けちな滝なので、水量が少ないときは、ひょいひょいと越えていけるのだが・・・水量が多くて手前の淵をへずると、落ちそう。滝も登るとびしょぬれになりそうです。こりゃ困った。


「どうした」「濡れそうであがれん」「どうするんじゃい」「三明さーーん、どうすんの」等々、大軍隘路にひしめく、の図


脇を巻くことになり、ロープを張って
順番で越えていく。


その上の、下滝1も高巻き。
低い滝ですが、滝上から見ると、高度感あり。

2つ高巻いて、行くと、不動滝(男滝)が見えてくる。

水量も多くて、かっこいいのですが、日差しが強く、滝水に反射して、写真はよく撮れません。

支流の懸谷の滝で、水量が少なく、滝面は岩石の層理か節理に沿って、小さな段があり上部平滑、最下部オーバーハングの形です。
水量の少ない、未分裂の懸谷滝って、この形が多いですね。
 今日見る滝では、山口の滝もそうでしたし、これから見る棒滝も似ています。

不動滝の脇に、本滝(女滝)が落ちている。

この滝もいい滝ですね。

本滝は、左岸を高巻くので、工作に三明さんは大汗。

残りの連中は、思い思いにのんびりしている。

 

作業中の三明さん。


本滝を高巻いて滝上より。

人物の地点に、埋まった円形の滝下広場があり、本滝はそこから連瀑となって後退している。


本滝の上は、高い廊下で、すぐ上滝1が直角に落ちてくる。

(この写真は講師作成)

今までの画像は、水の無い時の写真で、えらくぼろかったので、
期待して撮影。

しかし、今回は、水ある状態ですが、コントラストがめちゃめちゃ強く、秘術を尽くして合成・加工するよりなし。
 滝の写真は難しいですね。


講師 「水が少ないと、水線をそのままあがれるんですけどねえ」
加藤さん 「こんなに水量多くちゃ、びしょびしょですよ」
講師 「うーーむ。この季節じゃ冷たいですねえ。」
全員 「どうします」
講師 「三明サーーん。どうしようか」
三明 「高巻くしかないでしょ。やれやれ(-_-)」


講師 「ひとつも滝を直登しないのは残念だね \(^o^)/」・・・と太平楽を言う。
三明 「なに寝ぼけたこといってんの。(-_-メ) 高巻き高巻き (T_T)」

講師 「へーい <(_ _)>」

三明さんが働いている間、のんびり見物


高巻き中。



上滝1の上流で川に下りられず、上滝2も巻いてしまう。 何が写っているのか分からないでしょうが、上滝2です。


上滝2で、遷急区間が終わり。ひょいと川沿いの水田にでる。・・・左の平地。
県道まで斜面を登っているところ。
ご苦労様でした。
三明さんは、大汗をかいたので、
「やっぱ、直前下見はしないといかんなあ・・・」
といっていました。



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