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 払沢川の滝(払沢滝、ほか)の見どころ    
画像は講師 撮影
1。地形と地質

見に行く払沢の滝は、ほっさわと読むとのこと。 名瀑100選の滝の一つに選定されているが、滝人間には、それほどの名瀑ではないといわれつづけている気の毒な滝です。60m中20mしか見えないということが大きいのかもしれません。
 
 払沢(ほっさわ)滝の川が払沢。
払沢滝より上流は瀬戸沢というそうですが、全体を払沢川とします。

払沢川は、本流との出合いは、260m弱。流域の最高は、南東の松生山の西、936m峰。比高 670m。

この川も、千足沢と同じく、秋川の支流で、3つの遷急点があります。

 払沢の滝は第2遷急点。行く途中の穿入曲流しているあたりに、第3遷急点があります。 第1遷急点は、ずっと上流で、道沿いですが、誰にも相手にされてない遷急点みたいで、行くのは探検の覚悟がいるかも。 

払沢川の流域(図の赤線で囲まれた部分)は、千足沢とは違って、露岩や岩峰がなく、平滑な斜面になっていて、峰も尖った形でなく、平らな緩やかな形で、高度も低くなっています。しかし、斜面の傾斜は結構急で、谷の下刻もすすんでいます。
 払沢滝の所に、五日市−川上構造線という断層が走っていますが、その断層から南が小仏層群の地層で、その北の秩父系の地層のように、チャートや石灰岩をほとんどはさまない、割れ目のたくさん入った砕けやすい砂岩・頁岩等の堆積岩からできているため、侵食に弱く、なだらかな地形が作られていると考えられます。
 
 今回の観察会では、出合いから払沢滝までしかいかないので、他の支流とも共通する、第2、第3遷急点地形を観察するだけ。

 実は、流域内の地形で、不思議な地形があります。滝の上流の第1遷急点下流付近に、平たんな谷になっているところがあり、通称、瀬戸沢の一軒家の平たん地といってますが、実はその理由や時代がわかんなくて、不思議な地形です。どなたか調べてもらいたいですね。
 
払沢滝までの地質図です。
地質図は、東京都(2003)。地形図は、国土地理院2.5万五日市より作成。

3つの地層がありますが、岩質は砂岩・頁岩層で、割れ目だらけで侵食には弱体な岩石であるのは変わりません。

そのなかで、払沢滝と、曲流部分の小滝が、第2遷急点、第3遷急点にあたりますが、いずれも、断層線の位置にあり、滝の後退が断層線で止まっているという可能性が強いですね。
 断層をはさんで、岩石の硬さに特に違いは無いので、下流の2つの遷急点が、断層線と関係あるのは、断層面の所が、まわりの岩石よりひときわ侵食に弱いために滝ができやすいためだと思います。 弱層による滝というわけ。
●2。払沢川の縦断面

断面図
 川の地形を調べる時のお約束ですので、払沢川の縦断面を作ってみました。
 オオッ。これも、かっこいい断面ですね。
 3つの遷急点があって、
第2遷急点は、比高、約80mあり、その内、60mが払沢滝の連瀑帯となっています。
第3遷急点は、最新の本流の段丘形成に伴う下刻に対応した遷急点。
これについて、情報が無かったが、下見に行ったら瀑布帯がありました。


 
<画像左 (講師撮影)>
 第3遷急点の滝を上からのぞく。
 なかなか立派な滝で、4−5mありそう。

<画像右 (石井良三氏撮影)>
 第2遷急点の払沢滝 
 桧原村史によれば、4段。前に2段あるから、 6連の連瀑帯で、正面の滝が本滝:23.3m。
 ちょうど、五日市−川上構造線の断層面のところにある。当然だが、その上の三連、36m分は分裂して上流に動いている。
3。瀑布帯の形、遷急点・連瀑帯。地名としての滝・連瀑 
1。第3遷急点 
   出合い近くに、2連の滝があり、離れて上流に、上の画像の滝があります。
2。第2遷急点
 比高約80mの大きな遷急点です。5連の連バクで、
 下滝2:2m、下滝1:2.5m、本滝:23.3m、上滝1:16.8m、上滝2:13.7m、上滝3:2.3m となっています。本滝より上の滝は、桧原村史による。
 本滝より上流の連瀑帯の長さは50mぐらいということですので、あんまり分裂してないといえる。
4。滝面の形
  
 線滝円弧状直下型 全面滝壷。 頁岩 流域面積 1.96平方キロ

 本滝は、断層線(五日市・川上構造線)に懸っているという点で、特色ある滝です。意外と、断層線に滝があるってことはないんですよ。
 滝面は、断層面の影響で、滝崖が幅広のまっすぐな壁状です。明瞭な断層線がみられます。
 滝崖としては、崖の前面から漏水しているみたいに水がでているのがおもしろい。滝の上流側の水がめちゃくちゃに入っている基盤の割れ目を伝って出てきているのではと思います。 これも、断層に関連した現象かも。
5。峡谷の地形
穿入曲流  画像は石井良三氏撮影

途中に、小規模な穿入曲流があります。穿入曲流って、下刻しながら曲流している地形。

画像は、穿入曲流の屈曲部
この下刻の過程は、房総では、砂泥互層の層理面に平行な方向と直交する方向に沿って下刻されて、直角に曲がる形で形成され、それが河道の幅の拡大につれて丸みを帯びて行きます。この穿入曲流も、地層が砂泥互層で、下刻と変形の様子が千葉県の川とそっくりでした。
懸谷と懸谷型の滝・支流型の滝  画像は、石井良三氏撮影
小規模な懸谷の滝になっている。
すぐ上流に分裂して後退した支流型の滝があったみたいだが、堰堤の下敷きになっているようです。
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