滝巡り記録 その5                         もどる  つぎへ  もくじへ
 海沢渓谷の滝の観察 現地観察    大いに談ず。   時間を気にする。     
  (1) 井戸沢出合の連瀑帯、土石流で埋まった谷
  (2) 三ッ釜滝の連瀑帯
  (3) ネジレ滝の連瀑帯 
  (4) 大滝

  (5) 滝の保全、活用状況 →以下別ページ、ココへ飛べ(工事中)
  (6) 千葉の川と比較 →(工事中)
 (1) 井戸沢出合の連瀑帯、土石流で埋まった谷
井戸沢出合の滝
線滝になっている
三明 弘氏撮影
 支流から本流に
押し出した土石流堆

 三明 弘氏撮影
 
   チャート層。
細かい層状で、
複雑に褶曲し、小断層も
多い。
緻密で硬い。

●チャート層の滝の形→線滝

 井戸沢出合の連瀑帯
が、最初に見えてきます。
 懸谷の滝で、3つの連瀑が見えます。滝下に降りてとりつけなかったので、遠望のみ。
 井戸沢の出合には、F1(6m)F2(20m)F3(20m)があるということですが、行ってないので、高さや林道から見える滝がどれにあたるのかはわかりません。林道から見える3つの連瀑はF1とF2かもしれません。
 線滝で、溝状に滝面を掘っています。
チャートの滝は、 このような、細身な滝面が普通のようです。
 海沢層のチャートは、層状で細かく褶曲していますが、その形は滝の形には微細な表面形にしか影響していません。
 むしろ、全体として緻密で硬く、少し削るのも骨なのでチョビッとしか削れなくて、滝面が線滝溝状になってしまうらしい。
 むしろ、チャート地域では、断層などのチャートを切る構造線がそこだけ破砕されて削りやすいので、滝の形や谷の形(特に平面形)に影響し、地形によくあらわれています。

土石流の礫で埋まった荒れた谷
海沢園地から、三ツ釜滝にかけての谷は、下流のように岩盤が所々見えるような峽谷でなく、谷中央が盛り上がる形の巨礫の堆積物で谷が埋まっています。
これは、
土石流の堆積面で、徳和渓谷でも沢山でてきます。
 川の勾配がメチャクチャ急な(房総の常識では)ため、大洪水の時に、巨礫を運搬できる
土石流が発生するからだろうと思います。
 逆に、ちょっとやそっとの小洪水では、河床は全然変化しないようですね。
 房総では、こんな荒れた状態の川はありません。しかし、房総のような穏やかな川が異常で、海沢のような荒れた川が山地河川としては普通らしい。(^_^;)
 そんなわけで、滝以外の河床の景観も、房総のように平らな岩床が続くということはなく、巨礫をまじえた礫に覆われて岩盤が見えない(埋まった状態にある)河床が普通で、岩盤のでてくるのは、滝の所だけというのが普通ですね。
 房総人からいうと、
「滝はいいけど、川は荒れてて良くないな・・」と感じると思います。 
  三ツ釜滝手前のチャートの巨大転落礫    写真 本間 征氏撮影
 
      プロデューサーの感想
 よく喋るんだよね・・・時間が心配で。
 
 写真 本間 征氏撮影 
(2) 三ツ釜滝の連瀑帯
 三ツ釜滝 本滝、下滝T・U
 並木健祐氏氏撮影
  手前の水面が滝壷もどき。
3つの滝にみえるが、この上に2つあり、
5つの滝の連瀑
滝高:
 5
連の連瀑。滝下からは下の3つしか見えない。
 比高19m。区間長28m
 下滝U、2.5m。下滝T、2.5m。本滝 6.7m
 上滝T、5.0m。上滝U、27m。
  (断面図参照 ↓)   
  岩質は、褶曲したチャート。
 三ツ釜の釜は、上滝T、U、本滝の下の滝壷のことでしょう。滝下の一見滝壷(右の写真の手前の水たまり)は、巨礫の堆積によるもので、滝壷ではありません。滝壷もどきといえばいいかな。←まわりの地形を見れば、谷が埋まっているのが分かるので、河床の岩を掘り込んだ滝壷でないことはすぐ分かると思います。確かめて下さい。
 しかし、これを滝壷だと間違えている人が多いようですね。古人は、ちゃんと見ていて、上から釜が3つという意味で名前が付いているのでしょう。滝下の滝壷モドキは、比較的最近にできたのでしょうね。
 このような、滝壷もどきは、上流の大滝にも見られます。
 ろくでもない地形ですが、房総の滝にはほとんどない河床微地形ということはできますね。
成因:本流型の滝。
変遷:
 瀑布帯の最初の滝にあたる。

 上流に遷急点が移動していった跡に残された滝。
滝面:下滝Tは線滝円弧状急傾斜滝面、全面滝壷。
    本滝は、線滝円弧状急傾斜滝面、全面滝壷。
      ---滝面なんかより滝崖が凄い。
立地:構造線(断層でしょうね)と流路の交差点にあたり、流路が直角に曲がる屈曲点にある。 
 
↑上滝Tを上から見る
 滝面や滝壷の平面形がチャートの層理面に沿っていることがわかる。
断面図
滝面の表面形はチャートの層理面になる。

この程度の影響力しかないので
層理面の影響を過大評価しないように。
 
上滝U。
緩傾斜な面滝複合型で円弧溝状副滝。全面滝壷。滝壷の部分が小褶曲の背斜軸に当たる。滝壷の平面形は層状チャートの層の形に影響されて、円形でなく長方形になっている
 チャートの崖。
 チャートの層理面を示す。   
三ツ釜滝から、遷急区間になるわけだが,ネジレ滝までは、谷がひらけ、廊下になっていません。大体の谷方向が、地層の走向方向であるせいかもしれません。
途中の河床は巨礫がごろごろで、千葉県なら目を覆わんばかりの荒れようということになるが、奥多摩ではどうも普通らしい。
(3) ネジレの滝
ネジレ滝 下滝Tと本滝   三明 弘氏撮影
滝高:3連の連瀑 下滝U、1.5m。下滝T、3m。
 本滝 8m(高さは目測なので怪しいです。今度きちんと測量したい)。
 岩質は、褶曲したチャートですが、滝の概形は急斜した断層面に沿っています(下図)。

成因:本流型の滝。
 大滝の下滝にあたります。大滝の図参照

変遷:3連の連瀑だが、実は本滝の上流に4つの上滝があり、大滝まで連続した瀑布帯になっています。(大滝の項参照)
 ネジレ滝〜大滝間は大体直線の河道で、上下の2つの滝のところで、河道がほぼ直角に曲がっています。屈曲点間の直線状瀑布帯というわけ。→千葉県の三芳村沢山不動滝の瀑布帯と同じ形。

滝面:下滝Tは線滝円弧状急傾斜滝面、全面滝壷。
  本滝は、線滝円弧状急傾斜滝面、全面滝壷。---滝面なんかより滝崖が凄い。
立地: 構造線(断層でしょうね)の交差点にあたる屈曲点にある(下図参照)。
 ● 微地形のコメント--構造線との関係-- 
ネジレ滝近くでは、谷の方向が直線的で、滝のところ
で、ほぼ直角に曲がり、その方向も直線的で、明らか
に、断層面に沿っているらしい。
 岩質は、東西方向の走向のチャートですが、チャートの節理等より、それを切る断層面に沿う侵食地形が目立ちます。
 つまり、断層線などの構造的な弱線に沿って掘り込まれた結果、谷の方向が急変しているわけ。そこに滝が立地してます。こんことは、別の二つの現象があるということです。
 →1。谷の平面形が、構造線に対応している。
 →2。滝は曲がり角にある。
 
 写真は、3mの下滝1と8mの本滝。

滝崖が直線的で傾いているのは、断層面やそれに並行した割れ目(図の赤線)を侵食して掘り出しているため。

 チャートが緻密で硬いので、割れ目の所のみが、侵食に弱くて溝状に掘り込まれるせいでしょう。
その滝崖はオーバーハングして斜めに高くそびえていて、チャートが緻密で風化しにくく、崩れにくいという岩質な
ことを示しています。
 溝の底は、歐穴状の連続した全面滝壷になっています。 この辺は、三ツ釜滝と同じ形です。

 この滝、小さいけど、風情ありということで、人気のある滝だそうですが、
 景観の要素を分解してみると、
 線滝の連瀑で、滝壷があり、屈曲、滝崖が立派といった所で、千葉県で写真写りの良い三芳村の沢山不動滝と同じような景観要素の組み合わせですね。
特に、この滝の場合、倒立する滝崖というのは例の少ない所かなあ。 
 ● 滝の変化

図のように、
 1.5mの面滝複合型の下滝U。
 その上に滝壷が2つ(下流側は埋まっている)
 3mの円弧状線滝、急傾斜の下滝T。
 最新の滝壷
 8mの円弧状線滝、急傾斜
 本滝。
 になっています。

 本滝の滝上には、滝崖落下と思われる、巨礫が挟まっている。
(チョックストンと言っていいか疑問)

滝壷の深さは測れなかったので、推定です。

 滝壷の平面形から、滝の後退が解ります。
 なお、
滝壷上の滝崖に、小さな滝壷の跡があります。横方向にえぐりこんでいるので、この小滝壷が活動していた時は、水面がもっと高かったことを示しています。
君津市田倉 錠の滝
写真 木平 勉氏提供
 
 ● 千葉県の滝との比較(同じところ、違うところ)

ネジレ滝は、円弧状線滝で歐穴連続状全面滝壷、と分類しました。
千葉県にも同じ形式の滝はあるでしょうか? → ありました。
君津市田倉 錠の滝 3.5m。高さはミニチュアで 、滝崖の地形は違うけど、滝面の形は同じ形式です。
 奥多摩の滝と鹿野山マザー牧場の下の滝とが地形的には同じというのは面白いですね。

 しかし、オーバーハングして斜めに高くそびえる滝崖という地形は、千葉には無い地形で、まさに、チャートの特徴かもしれません。
  
    ネジレの滝手前の岩が滑るので、ロープ張り
 (4) 海沢の大滝
滝高:29m+埋没4m  (上部がよく見えないので不確実)。
滝面:線滝上部円弧状、下部溝状急傾斜。  下部4m程度は土石流礫で埋没。
  岩質は、チャートですが、滝の概形は急斜した断層面に沿っています。
 三ツ釜、ネジレ、大滝の3つとも、滝の形は、チャートの層理面でなく、より大きな断層面に対応している。
 断層面が弱線でそこが崩されるようですね。
 大滝の下は土石流が堆積して埋まっていて滝壷風の水たまりなどがあるが、滝壷もどきです。
形は、井戸沢出合の連瀑に類似する。
        (本間 征氏撮影)
成因:本流型の滝。瀑布帯の本滝にあたる。 

変遷:
ネジレの滝〜大滝の間に4つの滝があり瀑布帯をなしている。
  比高約60m。区間長120m。
  ネジレ滝〜大滝間は大体直線の河道で、
 上下の2つの滝のところで、河道がほぼ直角に曲がっている。屈曲点間の直線状瀑布帯というわけ。
  →千葉県の三芳村沢山不動滝の瀑布帯と同じ形。
立地: 構造線(断層でしょうね)の交差点にあたる屈曲点にある。
 東西方向の崖と南北方向の構造線起源の崖があり、そこで直角に屈曲する。

大滝の上の滝について様子が分からないので詳しいことは言えない。
 <ネジレ滝〜大滝間の瀑布帯の滝>
ネジレ滝の上滝TとU
(本間 征氏撮影)
上滝W 5m
 並木健祐氏撮影

   大滝での記念撮影

  全員写す。 
 <海沢渓谷の滝のまとめ> 
以上、
 
海沢渓谷の滝はチャートの滝としてまとめられる。
 その特徴は、線滝で、溝状。
 構造線沿いの掘り込みか、チャート層理面の剥ぎ取りの形で侵食が行われているという点が顕著。
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