滝巡り記録 その8 もどる つぎへ もくじへ |
滝を現地で見る(徳和渓谷) |
(1) 栃山の滝・夢窓の滝 (2) 長尾滝の連瀑帯 (3) 愛染滝の連瀑帯 (4) 荒神滝の瀑布帯 荒神滝、乾門・白虎滝、竜神滝、柳滝 (5) 滝の保全、活用状況 (以下工事中) (6) 千葉の川と比較 (7) 恒例、滝のデータ 文中の図は、滝おやじ作図。無許可複製不可です。 |
(0) 徳和渓谷整備状況 撮影 本間 征氏 | |||||||||
川沿いに、人工構造物の道とハシゴが付けられている。 滝の写真撮る時視界に入らないようにはなっている |
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熊に襲われたら保険は効くかな・・ |
荒神滝の瀑布帯から下は、巨大な堰堤の連続 山梨県の川はメタメタだ。 |
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(1) 栃山の滝、夢窓の滝 | |||||||||
夢窓滝の 地形 写真はデジカメの 合成 便利ですね |
下見の時に撮影。 人物は千葉滝人間吉野さん。 滝の落ち口が中島で2状になっている。洪水時には一条になってしまうだろうから、まだ発達初期だが、これが両溝形滝面というやつデス。 |
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この2つの滝は、少し離れているけど、遷急点が動いていった跡に、取り残されている滝群と解釈できる。 ●栃山の滝 滝高さ:5mぐらい 濡れるのがいやで、取りつかなかったので、滝の様子はよくわかりません。(^_^;) 成因、変遷、立地、滝面(面滝複合型の掘出し溝みたいでしたが?)、 滝のすぐ下流に、高い堰堤ができてしまっています。 案内看板もなく、観光パンフレットに名前があったのみ。 ●夢窓の滝 滝高:目測2段 11m。岩質は、地質図では、ホルンフェルス(溶結凝灰岩起源)→12/9に確かめて下さい。特殊な岩です。 成因:本流型の滝。滝が残された理由としては、硬いホルンフェルスの存在が考えられます。
変遷:瀑布帯の形は、単瀑で、平面が鍵の手に屈曲しています。廊下が20mぐらいあり、滝が動いてきた跡になっている。 →よくある形で、富津市の梨沢の大滝に類似していますね。 滝面:滝面形は記述すると・・面滝両溝直下型、全面滝壷 →三芳村の坊滝を上下に縮めるとこの滝になるかな。⇒ 立地: 屈曲点にある。 微地形のコメント 面滝といっても、川幅が狭く、線滝風ですが、落ち口の形が面滝。 滝面の両溝型というのは、千葉県では少ないタイプです。 地層との関係は調べる時間がなかった。→どっちかな。逆層?順層 最近の滝の変化 写真でもわかりますが、断層状の割れ目があって、以前そこに滝面があったみたいですね。 滝壷上の滝崖に、小さな滝壷の跡があります。横方向にえぐりこんでいるので、この小滝壷が活動していた時は、水面がもっと高かったことを示してますね。 |
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(2) 長尾滝の連瀑帯 | |||||||||
滝高:4連の連瀑からできています。全体の比高は比高15m。 岩質は、地質図では、ホルンフェルス(溶結凝灰岩起源)→12/9に確かめよう。特殊な岩です。 成因:もろ、懸谷の滝ですが。他の谷に懸谷の滝がなく、長尾沢にのみ滝が残されている理由としては、硬いホルンフェルスの存在が考えられます。 滝面: 下滝V、面滝複合壁状急斜、直立した地層面が滝面になっています。 本滝、面滝壁状緩斜全面滝壷、地層緩斜 順層。 → よくあるタイプ。 ホルンフェルスの滝ってあまり見たことがないんですが、この滝のように、滝面に平行に薄く剥が れていくという削られ方をするように思う。 |
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下滝3、面滝複合壁状急斜。 房総滝人間 中村秀哉氏撮影 |
本滝、面滝壁状緩斜。 房総滝人間 中村秀哉氏撮影 |
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変遷: 瀑布帯の形は、4連の連瀑。 林道に面している滝は、下滝V、5.2m。その上に下滝U、1m。下滝T、2.5mがあって、本滝6mがあります。 →屈曲点間の直線状瀑布帯で、三芳村の沢山不動滝の瀑布帯に類似していますね。 立地: 本滝と下滝Vのところにはより硬岩層があるみたいねですね。 最近の滝の変化: 図のように、長尾沢の谷は以前の土石流で埋まり、土石流堆積面が谷底を覆っています。 それを、再度川が掘り込んで、以前の段を掘出し滝となっているものです。 地形的には同時期の、本流上流の東奥山窪、西奥山窪の谷でも同じように土石流に覆われた谷が見られます。 12/9にみましょう。 |
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<土石流により埋没した 谷と滝の微地形> 本滝部分ですが、滝面は土石流堆積物より下にあります。 一度厚く埋まった本滝が再度掘出されたわけです。 本滝の脇から土石流堆積物をしみ出した伏流水が滝の岩盤で湧いて、小さな谷ができています。 こんな微地形もちょっと珍しいかな。 この土石流の年代は? 分かったら面白いのですが、分かりません。 勿論、ローム層なんかものってないし、ごく最近のものと思いますが、地元で聞き取りなんぞしなければわかりそうもありあません・・。 土石流堆積面には、樹木が生えていますから、発生後何年か経っているものとは思います。 |
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(3) 愛染滝の連瀑帯 | |||||||||
東奥山窪の出会いに、胴切の滝、その上に愛染の滝となっ ていて、 遷急点の立地としては分流点のタイプです。。 ただし、「胴切の滝」はたしかに水は落ちていますが、どうみても地学的には滝でなく、支流出合の狭隘部にたまった礫の 段ですので、説明省略。 ←の写真 その上の愛染滝は下から見て 比高6mの立派な連瀑です。 →の写真。愛染滝の本滝と上滝 高さ:比高6m連瀑。本滝4m、上滝2m。 成因:懸谷の滝(やや、滝が後退していますけど)。 地質は花崗閃緑岩ですが、特に瀑布帯の成因や立地に地質が 効いているようにはみえません。 変遷:連瀑。花崗閃緑岩の節理面を掘出して滝が後退している。 屈曲している。 立地:屈曲点に滝があるが、花崗閃緑岩の節理面に対応。 滝面:本滝は、 面滝壁状直下型。 上滝は屈曲点(節理があるかもね) 微地形のコメント:大きな直立節理面に沿って河道ができている。 12/9にみてね。 |
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(4) 荒神滝の瀑布帯 1 <荒神滝> | |||||||||
西奥山窪の瀑布帯。東奥山窪の愛染滝の瀑布帯とペアの瀑布帯です。 大きな支流合流点のすぐ上流にあるタイプです。 瀑布帯の構成は、荒神滝、乾門・白虎滝、竜神滝でひとまとまり。 離れて、柳滝があり、これは、同時期のものか不明です。 比高は地図読図も測定も不正確なので、はっきりしないが、30mぐらい。 瀑布帯規模は、千葉県の大多喜町粟又の滝や富山町外野の瀑布帯と同じぐらい。小規模でしょうね。 |
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<荒神滝>
瀑布帯最初の滝で、姿のいい滝ですね。 滝高:比高6.5m。単瀑です。 岩質は、花崗閃緑岩 成因:本流型の滝。 変遷:単瀑で、すぐ上の乾門・白虎滝を本滝とすれ ば、下滝にあたる。残された滝ですね。 滝面:面滝複合型掘出し溝形緩傾斜。 溝は歐穴溝状に侵食。 岩質は花崗閃緑岩。 立地:直線の河道にあり、やや硬い岩石により滝が 残っていると思われるが、未調査。 微地形のコメント: 主滝は緩く傾斜した順層になる節理面に沿う。 副滝は掘り込み溝で、直立した節理面に沿って いる。 溝は抉られていて、歐穴状。 花崗岩系の岩石の節理系に沿う弱線掘出しと丸 みを帯びた侵食微地形を示す。 |
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(4) 荒神滝の瀑布帯 2 <乾門・白虎滝> | |||||||||
滝の名前は2つになっているが、実質は一つといってもいい近接した連瀑帯で、瀑布帯の本滝となっている。比高11mで、壮大な滝崖を持つ。
地質は花崗閃緑岩 成因:本流型の滝。 変遷:本滝(乾門滝)5m、 上滝3段 6m(白虎滝)。 滝面: 本滝:乾門滝: 線滝円弧状直急傾斜型、 全面滝壷。 上滝:白虎滝: 線滝円弧状緩傾斜型、 全面滝壷。 →図参照 立地:未調査。 微地形のコメント: 2つの滝の部分は狭い廊下になり、平坦な 床跡が段丘となって残っている。 この段丘上には過去の土石流によると思われ る運搬されてきた巨礫が残されている。 最近の滝の変化 乾門滝は、巨礫の乗った段丘面がかって 河床だった時には段丘末端の崖が滝面だっ たと考えられます。 その後、現在の乾門滝の部分に副滝ができ、 それが節理面に沿って、直線的に掘り込んで 現在の白虎滝に至っていると考えると簡明。 白虎滝の下の横断方向の溝は花崗岩の節理 面に沿う掘り込みと思われます。 |
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(4) 荒神滝の瀑布帯 3 <竜神滝> | |||||||||
滝高:比高3m(目測)。単瀑。 岩質は、花崗閃緑岩 成因:本流型の滝。 変遷:単瀑で、すぐ下の乾門・白虎滝を本滝とすれば、 上滝にあたる。 滝面:面滝複合型掘出し溝直下型。 主滝は大半が土石流で埋まり、緩傾斜。 副滝は掘出し溝、直下型。 立地:直線の河道にあり、やや硬い岩 石により滝が残っていると思われるが、未調査。 微地形のコメント: 土石流で埋積され、再掘出し。 主滝部分は半分埋まったまま。 写真のアングルから見た概念図。 水の大部分が落ちているのが主滝。右の切れ込み溝が副滝。 樹木の生えている巨礫の河原が、土石流堆積面で、主滝の半分以上 を埋めている。 |
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(4) 荒神滝の瀑布帯 4 <柳滝> | |||||||||
竜神滝とは大分離れているし、滝も小さいので、同じ瀑布帯の滝ではなかろうと思いますが、便宜上、一緒にしておきます。 ご覧のように、巨礫の下が滝。滝は巨礫に埋められ ほとんど見えません。 滝そのものも、大部分埋まっていて、高さすら定かでありません。 むしろ、立派な土石流堆積面が見られ、そっちのほうが面白い。 滝高:比高2m(下部埋没している可能性高し)。単瀑。 滝面形は 埋没しているので不明。 岩質は花崗閃緑岩。 成因:本流型の滝。 最近の変化:土石流で埋積され、再掘出し。ほとんど埋まったまま。 埋没土石流は何十年も前のものかもしれない。 |
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<柳滝付近の土石流堆積地形> 新旧2時期の土石流堆積面が見える。 | |||||||||
左の図のように、土石流堆積面1、2がある。 土石流1は、川から比高が7〜8mぐらいあり、段丘状になり、土石流2は、柳滝を埋めて谷の中央が盛り上がる形で溜っている。 大洪水で、土石流1で、厚く谷がうめられたあと、再度、谷が掘られていた所に、土石流2で再び川が埋まった。その後、川が2の堆積面を掘り込んで、現在の谷を掘出し、埋められていた柳滝の一部が露出している。 土石流2は、下流の竜神滝を半分埋めている土石流と同じ時期のものかも知れない。 |
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滝のすぐ下流、右岸側の様子。 上の面が土石流1の堆積面。 下の面が土石流2の堆積面。下の面が写真右手の柳滝を埋めている。 当然、土石流1は2より古い。だけど、時期は不明。 |
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<土石流堆積物2の断面> 滝の下流左岸側の様子。 比高4〜5m以上で、巨礫でできています。 断面は、カマボコ型で中央が高く、谷を完全に埋めています。 表面には大きな木が生えていて、堆積後十年以上は経っているようです。 |
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●<滝の地形まとめ> | |||||||||
1。花崗岩の性質からみた滝の削られ方、できる地形 ご覧のように、花崗岩って、立体的に左右上下に節理面が入っているので、岩石は結構堅いのですが ブロックでポコッツと割れてしまうみたいです。それで、滝面の表面形が節理面に一致することが原則になっています。 というわけで、水流の作りたい地形があると、それを、節理にそって立方体でなぞるように滝の地形を造形することになります。 そんなことから、滝面は直下型が多くなるし、滝幅も幅広になりやすいみたい。滝面や副滝が直線の掘出し溝形になるのもよくみられます。 節理面以外のところを削る場合は、花崗岩が粒状の岩石なので、砂岩に似た曲線的な侵食形になりますが、滝面形としては副次的です。 ただ、節理がまばらにしか入っていない粗い節理の花崗岩だと、丸みのある形が目立つようになります。 なお、徳和渓谷ではありませんでしたが、花崗岩の滝では両溝形の滝面が他の岩石より、できやすいようです。 チャートの細身のスマートな美人滝とは違って、きめのあらい、ごつごつしたムキムキマン滝になるってことです。 というわけで、私はあんまり好きな形じゃないですね。 2。土石流と谷 長尾滝や柳滝の事例で見られたように、大洪水で土石流が発生して、谷底がすっかり埋まり、その後の洪水でその堆積面が掘り込まれて滝が掘出されるといった河床の変動を繰り返していることになる。 房総の河川では、勾配が緩いので土石流が川の河床で発生することはほとんどないと思います。その辺の違いが、川の景観の違いでもあるのでしょうが、その作用の違いもかなりのことがあると思います。 普段の河床は、土石流の運んできた大きな礫でうめつくされていて、露岩は滝のような所でしかでない。 というわけで、谷の下刻や遷急点の移動は、滝の場所でしか起らないみたいですね。 |
本間さんの徳和渓谷のきれいな写真アルバム | |
長尾の滝 下滝 |
胴切り滝 この滝は、滝モドキ。 |
愛染滝 |
愛染滝 |
荒神の滝 この写真だけ吉村さん撮影 下見のときの写真 吉村さんの傑作です。 パソコンの壁紙にして愛用。 |
荒神滝の前で記念撮影 徳和渓谷は日がささない暗い谷という評判だが、 早起きして、早朝訪れたのは正解。光線が良く、とても谷が明るくて、きれいだった。 ・・・このへんがプロデューサーの腕ですね。 |
乾門〜白虎滝の間のデカイ滝崖 |
白虎滝 この滝は、すぐ下の乾門滝と一体で、凄くかっこいい滝なのだが、傾斜の緩い滝の通例で、 どうにもうまく写真にならないみたいです。 本間さんのこの写真は良く撮れていると思います。 |
柳滝附近の土石流堆積面を行く。 土石流堆積面が谷の中央で盛り上がっている。 |
柳滝にて 対岸の山に見えるのが、古い土石流の堆積面 |
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